おかしな娘のオモロイ話(12)ーガチャポン（下）

子供たちのガチャポンに、さほど厳しくなくなった私。ちゃん丸とカレンは、お出かけのたびにガチャポンをする。
私：一回だけだよ。もう一回！は、なしだよ。
そう約束して、ガチャポンを回す。ちゃん丸もカレンもちゃんと約束を守り、お目当てが出ても変な物が出ても楽しそうに笑っている。

そんなある日。「宅急便でーす」という元気な声と共に夫宛てに大きな段ボールが届いた。しかも２つ。なんじゃ、こりゃ。届いた荷物を開けずに夫の帰りを待つ。２つの段ボールは、それはそれは大きくてほとんど１部屋を占領している。

夕方、夫が帰宅。
夫：俺宛に荷物来てない？
帰宅一番に確認。段ボールの中身は何だろう…そんなに大事な物なのか？
私：来たよ。あれ何？大きすぎて、あっちの部屋に入れた！
言い終わらないうちに夫は荷物のある部屋へ。そして、ちゃん丸とカレンを呼ぶ。
夫：おぉ～い！ちゃん丸！カレン！おいで～！！

ちゃん丸とカレンが段ボールの部屋へ走っていく。もちろん私も。
夫：ジャジャジャーン！！♪
いよいよ開封。みんなワクワク。何だろう…段ボールを解いたそこには、なんと大きなガチャポンが置かれていた。ガチャポンの本体そのものである。は？私は頭の中が真っ白になった。ちゃん丸とカレンは大興奮。ガチャポン本体の周りをぐるぐる飛び回っている。

もうひとつの大きな段ボールからは、山ほどのガチャカプセルが飛び出てきた。なんと、３００個セットを買ったのだとか。私はもう泡を吹く手前。
夫：これで毎日いくらでもガチャポンができるぞ～♪
３人のテンションは最高潮に。白目を剥いているのは私だけ。

私：…ちょっと待った
夫：おっ？どないした？
私：…何これ？なによ、これ…！
静かに怒る口調を察して夫が慌て始める。
夫：あ、これな、買ってん！アマゾンでまぁまぁ安かったよ。これでもう外でガチャする必要なくなるやろ？お金使わなくて済むやん？

いや、ツッコミどころが多すぎて、どこからツッコメばいいのか全然わからない。
私：…誰のお金で、いくらで買ったの！
夫：あ、あー、それは…1 万 8 千円…… オンマのカード使っちゃった… でも！でも、やん！！これからは1 万 8 千円ガチャに使わなくて済むんやし、いい買い物やん～♪

ちゃん丸とカレンは本体の前に並んで座ってやりたくてウズウズしている。
夫：しかもな、これ、ただのガチャガチャじゃないねん。ホンマに５００円入れな回されへんやつ。だからね、大っきい５００円玉貯金箱だと思ったらええやん！ね？どう？ガチャ回すたびに５００円も貯まってくのよ！５００円玉貯金始めて、貯まったら旅行行きたい～って言うてたやん！
夫の弁解が想像のナナメ上を行きすぎて、ついに私は吹き出してしまった。これが、５００円貯金箱だって？ …なめてる。

でも確かに…これなら貯まるかも。(笑)
夫：ちゃん丸とカレンも夢いっぱい♪ オンマも夢いっぱい♪ みんな幸せになれるガチャポンやろ？ほら。今日は１回目だから、アッパいっぱいお金くずして５００円玉にしてきたで。好きなだけやり。今、中身のオモチャを入れてやるからな。

そう言うと、ちゃん丸が使わなくなったオモチャたちをカプセルに入れて本体にセットしていく。いつかファミレスでもらったマスコットのキーホルダー、ガチャポンで出た残念なオモチャ、スーパーボール…。セットする過程でさえ、ちゃん丸とカレンは目をキラキラさせている。

出てくるのは自分たちが使わなくなったオモチャなのに、ちゃん丸とカレンは、それはそれは楽しそうにガチャポンを繰り返す。もうすっかり飽きられて忘れ去られていたオモチャたちが、もう一度輝きを取り戻していく。この日１日だけで３０００円貯まった。
私：…すごい５００円貯金箱だね(笑)
夫：やろ？いい買い物したやろ？褒めてほめて♪

それからというもの、外出先でガチャポンをやりたがるちゃん丸に夫が言う。夫：おう！ちゃん丸、帰ったらガチャポンやろう。今日は何が出るかな？
ちゃん丸もカレンもこれには納得し、帰宅後に家のガチャポンへ走っていくようになった。５００円貯金は、一体いくら貯まっているんだろう。想像以上に買った後のメリットが大きくて、私はもう何も文句が言えない。

ちゃん丸：オンマ、今日お金ある？
私：うん！今日５００円玉あるよー！
今では５００円玉の有無が合言葉のようになり、家族みんなでガチャポンで盛り上がっている。