京畿道の八堂(ソウルから東四〇キロ、漢江中流)に釣りで生計を立てている老人がいた。小舟で深い川の中央にまで漕ぎ、竿も使わず一筋の糸と針だけで腕ほどの大きな鮒や鯉などを釣って暮らす名人だった。
当時漢江には鯰、鮒、鯉、カムチル(雷魚)などの魚が多く、針一本で釣りをする漁民たちが集まって住んでいた。釣った魚は仲買人が買い取り、ソウル市中や近郊へ運んだ。主婦たちは春になると山菜摘みに出かけ、秋には胡麻油を搾って生活の足しにした。
ある日、主婦の一人が近隣の山で山菜摘みをしていたところ、山菜の根っこに白い瓶の口が見えた。何かと思って丁寧に泥を払うと、胡麻油を入れるのに都合のよい首の長い白色の磁器が現れた。その周りをさらに掘ってみると、同じような瓶がいくつも出てきた。中には割れたものもあったが、ほとんどが無傷なままだった。そこはまさしく、八堂にあった分院(官窯の一つ)だったが、主婦はそんなことを知るはずもなく、胡麻を搾って瓶が必要なときはそこへ何度も拾いに行った。主婦は秋になると胡麻油をその瓶に入れて売った。
仲買人たちの小舟が驚梁津に着くが早いか、商人たちは舟に上がり魚、山菜、胡麻油などを買い漁った。その中の一人、開城出の行商も鯉何匹かと胡麻油一瓶を二円で買った。
田舎で搾ったばかりの二円の胡麻油を、贔屓の日本人宅で四円で売るつもりだった。もし婦人が一円負けて欲しいと言えば、そうするつもりだった。
「そうね、少し高いわね、でもその瓶も一緒よね。可愛い瓶ね」
行商はそれまで畏まっていたが、それを聞いて急に気が変わる。
「いえ、こりゃ高価な瓶です。ただじゃありません。瓶代として別に一円頂きます」
日本人が欲しがるのを見てつい欲が出たのだ。利にさとい開城商人らしい気転だった。日本人主婦はおもむろに五円を差出した。さっきまで一円負けることさえ考えていたのに、一円余計もらったので行商人は浮々した。
その胡麻油の瓶が並のものではないと思い五円で買った主婦は、骨董商を営んでいる夫の村野にそれを見せた。この白磁は数日後、他の骨董商に六〇円で転売され、後日競売に出された。この胡麻油の白磁は全鎣弼が1万五千円の価格で競り落とすこととなる。
後日、この李朝白磁の価値が高まるにつれ日本人骨董商や収集家からこの瓶を求めて高額を提示されたが、全鎣弼は振り向きもしなかった。
この胡麻油の瓶。現在は韓国の宝物第二四一号に指定され、さらに国宝第二九四号に指定されている。
そんな魅力的な壺が土の中から出てくるの?
と言うことは、もとの持ち主は八堂じゃない?💦👀
拾ったものを転売して一儲けしようなんて~💦 少し詐欺っぽい😞
まあ、骨董に関心がなかったというか、無知だったというか…。
生活が苦しかったので、致し方ないかもしれないねぇ~
国宝に指定されたらもう売れないのかな?
全さんは大金を損したのでしょうか?
これを「損」と言うのは私の性根が貧しすぎるのでしょう。笑
国に売れば良いのに。🤭