卒業の春…再会の準備を始めよう

【スマホ小説】ボス 16

そんな事があって何日か経ったある日、自宅のマンションで寝入っていたハヌルは、けたたましく鳴る携帯電話の呼び出し音で、目を覚ました。

「もしもし…」携帯を取ると受話器の向こうからチのけたたましい声が聞こえて来た。「ヒャン!早くテレビ点けて!」「何よ、朝っぱらから…」「いいから早く点けて。早く!」「わかったわよ〜…ったく〜」面倒くさそうにテレビのリモコンを押した。

画面にはこの間の新人女優が、前回作品の監督とプロデューサーと揃って映っていた。『「ミス・ロー2」(ミス法律2)制作発表会』と看板が掲げられている。

「な、何よこれ…」ハヌルは驚いて言葉を失った。(シーズン2も私で行くって言ってたのに…)「どうなってるの?」と電話で声を震わせてハヌルは言った。「今家の前に居るわ。ドア開けて」と言うと電話は切れた。

ピンポーン…玄関の呼び鈴が鳴った。モニターを覗くと見覚えのある顔が並んでいた。芸能記者達だった。彼等はモニター越しに「ハヌルさん、シーズン2を降ろされた感想は?」「スタッフとの確執が?」「監督と不仲だったんですか?」矢継ぎ早に質問が空に浴びせられた。

「ガチャ」とドアが開いてチが入って来た。そして駆け寄るとモニターに向かって「インタビューは事務所を通して下さい」と言うとモニターを切ろうとしたが、その時「この酷評が原因ですか?」とある記者が雑誌を手に持ってモニターに映したが、チは見て見ぬ振りをしてモニターを消した。

事務所では社長が電話をしていた。細身で背は高くスラッとした体格であるが、エンタメ界で長くプロダクションを営んで来た独特なオーラが出ている。目は小さく眼光は鋭い。

「いや、話が違うだろ?って言ってるんだ。次のシーズンもうちのハヌルで行くって約束だったじゃあないか?」ちょっとしわがれた独特な声で威圧的に話している。普段の温厚な物言いとは明らかに違った。

「とにかく!納得の行く説明を待つから!」と言うと受話器を叩きつけた。「全く、なめやがって…」と言うと机を蹴飛ばした。

「何の批評?何が書いてあるの?」とハヌルはチに詰め寄った。チは「ふー」と息を吐くとカバンの中から一冊の雑誌を取り出した。

「この中にその批評が載ってるわ。あまりにも酷い内容だから伏せてたんだけど…どうもあの新人さんの事務所から圧力がかかったみたいね」とテーブルの上にバサッと置いた。

ハヌルは黙って雑誌を開くと、批評を読み出した。顔色が見る見る変わって来たが、ある瞬間フッと力を抜いた。そして雑誌を置きながら「酷い内容ね…でも過激に書けば書くほど嘘が滲み出てるわ。気にする事もないわよ」と笑いながらチを見た。「でも…当分はうるさくなりそうね…」とテレビを観ながら静かに話した。

事務所に着いた2人は社長と今後の対策について話をした。ところがそこへ計ったように製作会社の担当と監督が事務所を訪れた。まるで前もって準備してたかの様な2人の来社、余裕のある表情、担当者が持っている批評紙…「ハヌルは席を外す様に…」と社長はチに言うと2人をソファに促した。

「こんな言い掛かりがあるか?興行利益が少ない責任をハヌル一人のせいにするとは…評論家の批評まで並べやがって、汚い奴らだ!」社長は怒りを隠さない。そして批評が載った雑誌を机に叩きつけた。

「ハヌルに席を外させて正解だったわ…あんな話がハヌルの耳に入ったら、彼女がどんなに傷つくか…」とチはハヌルを気遣った。「でも、当分はバッシングが続くし、ハヌルの耳にも入りますね。ハヌルを妬む連中は多いでしょう…チ氏、ハヌルが傷つかないように気遣ってあげて下さい」彼は席を立った。

「社長?」チは社長の顔を見上げた。「もう一度話して来ます。どう考えても納得がいきませんから!」と言うとチの顔を見てニコリと笑って出て行った。

続く

1 COMMENT

空~

東京で、バーのマスターにうつつを抜かしてる場合じゃないよね~ ハヌル😆
でも、芸能界では、こんな話は日常茶飯事なのかな?
生き残っていくには、実力だけじゃなくて~ 裏でうごめいている魔の手💦
頑張れ~ ハヌル~👍 ボスも応援しているぞぉぉぉ~
んで? んで? 話の続きは???

現在コメントは受け付けておりません。