1本の樹にもー新米教師奮闘記⑳

男子バレー部の敗北によって女子部員たちの士気は一層高ぶっていた。男子の部長が女子バレー部員たちの前で、悔し涙をこらえながら「ワシらの仇をとったってくれ」と勝利を託したこともあって、女子部員たちの表情は壮絶とさえ言えるほどのこわばりを見せていた。

決勝戦の相手は中部の雄、愛知朝中である。試合開始。静かに始まった試合はラリーが続くにつれ徐々に白熱した。相手のエースがオープン、センター、バックと大車輪の活躍で和歌山初中のコートを脅かせば、こちらのエース・スノが中学生らしからぬ高い打点のアタックを叩き込む。ここで活躍したのは細身のキョンミだった。

身長はあまり高くなく体も小さいが、サージャン(助走なしのジャンプ)1mを誇る身体能力の“裏エース”である。相性が良いのか相手のエースのアタックをことごとくブロックに当てた。「ワンチ!」とキョンミが声を上げると拾ったボールがセッターに渡りサウスポーのミョンジャが強烈に打ち込んだ。「シャー!」ミョンジャが雄叫びを上げた。

ヒョングは関係者席で試合を観ながら、担任であるミョンジャのバレーの才能につくづく感心した。「最初に見た時も驚いたが、ミョンジャはどんどん進化してってるな。このまま行ったら将来バレー選手になれるんじゃね?」まだ中級部の学生だが、そんな期待を持たせてくれる。

その後も和歌山初中の猛攻は止まなかった。スノのオープン、ミョンジャのライトからのクイック、キョンミのブロック…エミョンのセットアップも絶妙で相手のブロックの裏をかいてノーブロックスパイクを演出した。いよいよマッチポイントだ。サーブが入り相手のレシーブが乱れた。チャンスボールが返ってくる。

丁寧に受けたボールはセッターのエミョンへ。後のない相手はエースのスノに3枚のブロックを付けた。それを見てエミョンはミョンジャにトスを上げる「ミョンジャー!」とエミョンが叫ぶ。ミョンジャが流れるような助走から強烈なアタックを叩き込んだ。バコーン!「シャー!」

一瞬の静寂の後「ヨッシャー!」とベンチは大騒ぎになった。観客席からは男子部員たちが総立ちで喜んでいる。教務主任と力強く握手をしながらヒョングは何とも言えぬ感激に包まれていた。

(お前ら、本当にすごいよ!俺、感動してるよ…)ヒョングの心が震えていた。