介護のジカン―父親編④

数年を二女の家で暮らした父が幸運にも特別養老ホームに入居した。父の終の棲家となる場である。朝から晩まで介護士たちが父の面倒を見てくれる。入居者は認知症患者だけではない。頭はしっかりしているが身体が思うように動かない人たちもいる。ホーム内はグループごとに分かれていて、老人たちはグループ単位で童謡を聴いたり歌ったり、ゲームをしたりテレビを観たりしている。

姉妹でお見舞いに行くと、介護士が認知症の入居者たちの前に空き缶を置いている。どうやら何かゲームをするようだ。父の前に数本の空き缶が置かれた。父は1本ずつ口を付けては「空っぽか」と文句を言ってポイと横に捨てる。ジュースかビールでもくれたと思ったのかしら? 認知症なのに飲食のことはちゃんと覚えているんだからなぁ。まったく…

入居者全員の前に缶が置かれたあとで介護士からゲームの説明があった。
介護士:はーい。皆さん、前にある空き缶を積み重ねてください
これは認知症患者のためのゲームなのだ。入居者たちが缶を2段ずつ積んで並べていく。その中で1人だけ不機嫌で何もしない人がいる。父である。
介護士:コウさん、ほら、缶を積み上げて
父:あんたがやりなさい!
もちろん、もうはっきりとは言えないが、にらむ目つきが言葉以上に語っている
缶の中が空っぽなのに腹を立て、ひねくれてしまったのだ。いやしいというかなんというか…わが父ながら呆れて笑ってしまう。

こんな父にも笑顔で接してくれる介護士さん、本当にありがとうございます。そして、わがままな父ですみません。食事や身の回りの世話、お風呂に下の世話まで、イヤな顔ひとつせずにやってくれる介護士さんたち。介護士って本当に大変な仕事なんだな~とつくづく思う。

1 COMMENT

頭が下がる

数年間は次女の家で、三姉妹力を会わせて父の介護。
みんな、頑張ったね。

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