新聞集金業務②―睨みつけるお客様

駅前の周辺整備で、一戸建の立ち退きを余儀なくされたある夫婦が選んだ住処は中古の大型マンション。駅から10分ほどの山間にそびえ立つマンションだ。共に70代と思われる。駅前の一戸建の時は、自宅前に置かれた自転車の有無で留守か在宅が分かったのだが、オートロックのマンションになるとそうは行かない。それ以上に奥さんではなくご主人が出る時が厄介である。

集金訪問時、ご主人はなぜか私を睨みつける。「えー?新聞読んでるんだからお金払うの当然じゃん」と思うのだが、あの怖い顔を想像すると一瞬インターホンを押すのを躊躇してしまう。どうか奥さんが出てきますように…

ご主人がムッとする理由のひとつは集金日への不満である。25日前後の集金は早すぎると言うのだ。月末指定となっていないので基本的にはいつ訪問してもよいのだが、彼にはダメらしい。「年金暮らしのご夫婦に月末もないだろう」と不思議にさえ思える。

気を取り直してマンションの部屋番号を押す。あ~あ、この日もご主人だった。また睨まれる。この年齢層の大半は<ご苦労様>、<寒いのにありがとう>的な会話で終わるのだが、いまだ会話したことはない。

時々当たり〜と、奥さんが出る時もある。ホッとする。ご主人とは打って変わってとても気さくで優しい奥さんである。なぜあのおじいさんにこのおばあさん?と、馴れ初めを聞きたいくらいアンバランスなご夫婦である。大体の時間帯が把握できたので、私は奥さんの在宅時間を見計らって訪ねることにした。

奥さんは4,400円の新聞代の支払いに決まって10,400円を差し出し、お釣りを千円札6枚にしてと必ず求めてくる。毎月のことなので、こちらも事前に千円札6枚を用意して行く。もしかしてご主人のお小遣いのため?ご主人の小遣いは1日千円かな?と、勝手に想像している私である。

そして、「来月も奥さんでありますように」と願いながらマンションのドアを閉める。

1 COMMENT

新聞配達少年

私は配達先で犬に吠えられたり、集金で嫌な顔されたりまた来いと言われるのが嫌で嫌で!でも書き手さんは仕事の中に面白さを見つけているんですね。妙に感心させられ、自己反省しきり⤵ 楽しいお話、次回は?

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