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55年前の大事件…北朝鮮に拿捕された「プエブロ号」ー④

返還されなかった船体

米国は事件後、何度か船体の返還を要求した。だが北朝鮮が、このすばらしい“戦利品”を手放すはずもなかった。

朝鮮戦争で鹵獲された米軍戦車(2016年8月22日撮影)

プエブロ号の船体は現在、平壌にある「祖国解放戦争勝利記念館」の普通江に面した川岸に係留されている。

この記念館は、朝鮮戦争を中心とした米国との戦いの歴史を展示する博物館。金正恩体制になって全面的に建て直され、2013年7月に大同江から運ばれたプエブロ号と共に公開された。

戦車や戦闘機など、米軍から鹵獲した数多くの兵器が並ぶ。その中でプエブロ号の船体は他のものとは桁違いに存在感がある。

プエブロ号の食堂(2016年8月22日撮影)

プエブロ号の船体には、実に興味深いものがたくさんある。

見学者はまず、入ってすぐの食堂で椅子に座り、北朝鮮が制作したプエブロ号のドキュメンタリー映画を見ることになる。朝鮮語だけでなく、外国人訪問者に合わせ英語や日本語でも上映される。その映画を収めたDVDは、艦内で購入することが出来る。

艦内で販売されているプエブロ号事件のDVD

次に艦内を見て回る。いつまでも観察していたいと思うのは、限られた将兵しか入ることが出来なかったという最重要の「調査区画」だ。諜報活動のためのさまざまな機器が、びっしりと並ぶ。

プエブロ号の調査区画(2016年8月22日撮影)

艦内のさまざまな箇所に銃撃や砲撃を受けた跡があり、そこが赤で印されている。それで死亡した兵士もいるので、実に生々しい。

プエブロ号の操舵室(2017年4月12日撮影)

そして操舵室に入る。人民軍の艦船との攻防で修羅場となっていた時のようすが思い浮かぶ。時には、プエブロ号拿捕に参加した人民軍兵士からその時のようすを直接聞くことが出来る。

船体移動にまつわる謎

プエブロ号の船体は、長らく元山に係留されていた。そこは、日本海側である。その船体が1999年、平壌市内の大同江に出現したのである。係留されたのは、北朝鮮にとって米国との戦いの“原点”ともいうべき場所だった。

大同江に浮かぶプエブロ号(2004年5月4日撮影)

1866年7月。米国の武装した商船「ジェネラル・シャーマン号」が、朝鮮王朝(1392年~1910年)との交易を求めて大同江の河口に停泊。そして、川を遡ることを拒否する旨を伝えるために送られた朝鮮の官吏を拘束。船は平壌の羊角島まで侵入した。

シャーマン号の船長は朝鮮に、金・銀・朝鮮人参と米150トンを要求。それが拒否されると川岸を砲撃したため、住民約10人が死亡した。これに対して住民たちは、夜中に船を攻撃して焼き払ったのである。

米国のアジア艦隊は事件への謝罪と通商を求め、1871年5月に「コロラド号」などの軍艦5隻を江華島へ送った。激しい戦闘によって朝鮮軍240人以上、米軍は15人の死者を出した。

シャーマン号撃沈記念碑(2008年6月26日撮影)

北朝鮮はこの「シャーマン号事件」を、米国による朝鮮侵略との最初の戦いと位置付けている。事件から100年にあたる1966年には、事件現場近くの大同江右岸に「ジェネラル・シャーマン号撃沈記念碑」を建立した。

プエブロ号の元山から大同江、そして普通江への船体の移動方法には謎がある。北朝鮮は今まで、公式にその方法を明らかにしたことがなかった。

元山から大同江へは、鉄道などの陸路を使ったのではないかとの憶測が主流だった。筆者は政府関係者たちに、その方法を聞いてみたことがある。「いくつかに分割して、陸路で運んだのではないか」と答えた人もいた。ところが、である。

「まんまと朝鮮の東海、南海、西海をぐるっと回って大同江に移ったプエブロ号の航行に、もっとも驚愕したのは米国だった」

このように21日の『労働新聞』の記事には、その方法が明記されているのだ。つまり元山から南下して韓国の南側を回り込み、大同江を河口から遡上して平壌へと運んだというのである。もちろんこれは物理的には可能なのだが、米国に知られると間違いなく奪還されてしまう。

大同江に浮かぶプエブロ号(2012年4月11日撮影)

「北朝鮮との交渉に深く関与してきた元職の重鎮は、北朝鮮が陸路ではなく海路、すなわち『東海→済州海峡の外側→西海→大同江』経路でプエブロ号を移動したことをほのめかした」(『ハンギョレ』2021年9月28日)

韓国で流れていた情報は正しかったのだ。それにしても、何としてでも船体の奪還をしたい米国や韓国の監視の目をかい潜って航行するのは、並大抵のことではなかっただろう。

続く

講談社WEBメディア『現代ビジネス』(2023年1月27日)から

1 COMMENT

大同江ホテルに泊まったことあるよ~

当時の米軍は、朝鮮を完全になめているね~💦
堂々と平壌の近くまで偵察に来たんだね~ 大胆💦👀
しかし、人民軍もその戦利品の船を、済州島を回って運ぶなんて、これも大胆💦👀
どうでも良いけど、そろそろ仲良く平和な世界を目指そうよ~😊

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