春のうららかさを感じよう

지영이는 보았다(第3弾)その4

人知れず始めた김への監視訓練のおかげで、本番である税理士ー松山への覗き見は大した緊張も感じなかった。チヨンは自分の時間表を改め、起床を午前10時に早め、ジム通いも週3回に減らして、その時間を松山の監視に充てる事にした。

肌のコンディションや酒によるお腹周りが気になるが、ここは我慢のしどころ。
覗いて見えたのは松山のオフィス。小ぢんまりしていて松山以外は事務員が一人の個人事務所みたいだ。事務所の電話がよく鳴るし、彼のスマホの着信もひっきりなし。来客の応対もあるから超多忙だ。

松山の電話の話しぶりからクライアント会社の年末調整や、来年2月の税金申告の相談が殆どだとチヨンなりに推察する。2回、3回と覗いても相変わらずだが仕事に真摯に向き合ってる松山の姿は好感が持てる。特に彼の通話から同胞たちは個人事業主が多く、みな必死に生業を営んでる事が読み取れる。総聯系の同胞の財務内容の記録を松山を騙して奪取する事に呵責の念が沸いてくる。

(명색이 공작원인데 이런걸 쫒다가는 税務調査官과 다름없네)
自分の任務を思い起し、何とか心の折合いをつけたいがうまく行かない。

ある時、事務所の電話で通話中だった松山が、中国の件は直接お会いして話しましょうと言っていた。チヨンのアンテナが反応する。総聯系の人が中国との商取引か?もしそうならと、色んな事を連想してしまうチヨン。そのルートでモノと金が北へ?国連制裁下では迂回ルートはあり得るし、この情報は見込みがありそうかも。でもさすがに飛躍し過ぎかな。

松山が通話の相手と会う日時がわかったのでその時を待とう。避けたい方法だが必要ならハニートラップも辞さないとチヨンは自分に気合を入れる。김に対する思いも本番モードのチヨンには障害にならない!

김は電話で上野行きの都合がつかないと言った後で明後日に行くからとまた知らせてきた。その次の日には行けないと電話で言う。チヨンは김との通話を思うとちょっと心配になる……

          続く