春のうららかさを感じよう

バブル時代の不動産業⑥ 片手より両手

不動産仲介業に入ってくる男たちの目的はズバリ金だ。俺のいた会社も給料体系が3種類に分かれていた。フルコミッションの給料を選択すると基本給は無しだが自分が契約した売上げの30%が歩合で支払われる仕組みなので、巨額の契約が控えてる場合はフルコミに変える営業が何人かいた。

会社では売り上げが重要視されるので、中古物件より新築を売れとハッパをかけられる。なぜか。それは片手と両手の違いなのだ。これも不動産用語だがひとつの不動産契約でも買主だけの手数料で終わらせず売主からも手数料を頂ける物件を紹介しろとハッパをかける。

そして新築物件の成約には〈担ボ〉(不動産隠語)というのがあって担当者ボーナスのこと。当時は新築20万円という暗黙の決まりがあった。近年ではもうそんな気前のいい業者はいなくなったけどね。なので中古物件を成約しましたと店長に報告したら「何で両手の物件を紹介しないんだ」と睨まれる。手数料をもらえる業者と成約する、かつ〈担ボ〉もいただける業者の物件を紹介しろとどなられたぜ。

注:誤解するなよ。俺は業法に定められた手数料以外に不当な要求をしたことは無いぞ