【思い出】うまかった「ワンタンメン」の店

自宅の近所に、昔ながらの中華屋さんがある。そっけないのでそのまま素通りしていたのだが、ある人に「あそこのワンタンメン」は美味しいよ～🍜との情報を頂き、勇気をもって疲れて破れかけた暖簾をくぐってみた。

そんな勇気はいるのか？と思われるが、店構えがもう戦前からやっているんじゃないかと思うくらい年季が入っている。暖簾もボロボロ、看板も剥がれ落ちそうな、どうしても敬遠しがちな雰囲気がプンプンする😅

いざ暖簾をくぐって中に入ると、テーブルが４つほどあり、奥が調理場になっている。品の良いサラリーマンや遠くから来たようなお客が、５人ほどすべて調理場を向いて座っている。注文するルールは、奥まで進み調理場に向かって「ワンタンメン一つ」と声をかける。

店にある冷水器にセルフサービスでお水を注いで、テーブルに戻ってひたすら待つ。調理場には、腰の曲がった老女がほっかむりをして、麺をほぐしたり大きな中華鍋を揺らしている。手前には娘さんとおぼしき６０歳ほどの女性がお手伝いをしている。どうも店主を亡くして、奥さんが店を引き継いで切り盛りしている様子だ。

すると、娘さんがラーメンの器を持って、奥から顔を出すなり「ワンタンメンはどちら様～？」と客席を見渡すと、客らが顔を見合わせて、あなたが先？そちらのお客？わたし？と、目配せをしている。要は、お店には他のメニューも有るのだが、すべての客が「ワンタンメン」を注文していて、先客と後客を客同士が勝手にルールを決めているのだ。

まもなく私の順番の「ワンタンメン」が出てきたと思って、周りの客を眺めると「どうそ～　どうぞ～」と「あなたのワンタンメンですよ～！」と言わんばかりのしぐさをする。