末は大物?④

男児なら必ず歩む道ではあるが、マー坊はとりわけ乗り物が大好き。いや、正確に言うなら乗り物に乗っている大人に憧れていた。

まずは新聞配達員。バイクに乗って新聞を配達する姿がカッコよく映るようだ。もちろんそれもひとつの憧れの要因ではあるが、当時の新聞配達はプールや遊園地のタダ券をたくさん持っていたので、それが羨ましいというよこしまな思いが第一要因である。

次に憧れているのが工事現場のおじさんたち。男児の大好きなショベルカーやクレーン車などを操るおじさんたちがう羨ましくてしかたない。そして消防士。単に消防車に乗りたいという、それだけの理由だが…

だが、その人たち以上に崇拝していたのが電車の車掌さんである。駅のホームでは「まもなく電車が参ります。白線の内側に下がってお待ちください」と自らアナウンスをし、電車が来ると必ず先頭車両に乗り込む。そして目の前の運転手の一挙一動をマネしながら、またもや「この電車はただいま上野駅を出発し、尾久、赤羽、大宮、上尾… 籠原まで順に停車します」と自アナ。

親は恥ずかしいったらありゃしない。目的駅で下車すると、マー坊は発車する電車に向かって敬礼する。運のいい日は電車内の車掌さんが敬礼を返してくれて軽く汽笛を鳴らしてくれる。そうなると、マー坊はもう大喜びである。

ホームで一通りの手順を終えて改札を通る時もマー坊は駅員さんに話しかける。
「ボク、電車が大好きなんです。この切符、もらって帰っていいですか?」「どうぞ」駅員さんは小さく微笑む。聞くところによると、この行動は鉄道少年の常識なのだそうだ。