教育実習の思い出（5）

スナック『マイ・ウェイ』を半分追い出されるように出た一同。時計を見ると午前1時過ぎ。電車の最終も出て鶴橋の駅は真っ暗だ。

「さぁ、もうそろそろお開きにしようか？」と声をかけると、公衆電話で電話をしていた一人の学生が走って来て「ソンセンニン、朝の4時までやってる焼肉屋があるから、そこ行きましょう」と言うと私の腕を組んで歩き出した。

10分ぐらい歩いただろうか…看板もない小さな民家のようなお店で、店の奥の六畳位の畳の部屋に通された。そこでまた、ビールを飲みながら歌を歌い、踊り、大いに笑った。私達の声があまりに大き過ぎたのか、店のママが部屋に来るなり鬼のような形相で「アンタらほんまにうるさい！もう帰り！」と、またまたこの店も追い出されてしまった。

季節は…秋とは言え11月初旬。冬が徐々に近付き肌寒さが一層強まる時期だ…さすがに寒い。時計は午前3時を回っている。

「お前ら、これからどうすんだ？」と私が聞くとこの辺が地元だと言う1人が「ソンセンニン、暖かいオコタがあるとこ行こ」と言うとある公園に連れて行ってくれた。その後を5〜6人の集団が続く。

「さぁソンセンニン、ここぬくいオコタありまっせ」とダンボールを敷く。
「へ？オコタってお前…ダンボールか？」
「ちゃうやんか、オコタやオコタ。早よおいで、ぬくいで」
（こいつ、酒飲みすぎて頭がおかしくなったんじゃねえか？）と思いながら周りを見ると、他の奴等もダンボールを何処かからか集めて来て敷いている。それも上下セットで…

（コイツら…さては今日が初めてじゃないな､まったく…それにしても､あ〜あ…思い出の教育実習の最終日が野宿とはな💦）学生が敷いてくれたオコタに包まりながら､公園の丸時計を見上げた。
（3時半か…確か9時に朝高出発する…って…言っ…てた…）

…

「아이고 불쌍해라‼️」조선할머니の嘆き声で目を覚ました。ハルモニが俺の顔を覗き込んでいる。

「ガバッ！」と起き上がった。思わず公園の丸時計を見上げた。
（良かった。6時半だ！う〜ん､頭が心地良く痛い）良い酒を飲むと不思議と頭痛も心地よい。
見ると6人の学生がダンボールに包まって並んで寝ている。

ハルモニからすると､こんな若い子がなんでホームレスをやってるんだ！と嘆いたんだろう。
ま、お陰で寝坊せずに済んだ。
「おい､お前ら。昨日はご馳走さん。楽しい酒だったよ。」と声をかけた。

1人が目を開けたが､すぐ目を閉じた。
「俺は朝大に帰っても頑張るから、お前らも…잘해라‼️」
ちょっとウルッと来たけど、そのまま「元気でな」と声をかけ踵を返して歩き出した。

そしてこの晩の出来事は一生忘れられないだろうなと思った。

（現在の野宿した公園です。分かり難いけど､真ん中の奥の方に丸い時計が…拡大したら見えます。）

こうして忘れられない教育実習は終わったとさ。（終わり）

始めから読みたい教育実習の思い出

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