Sジが高1の時、冬の終わり頃の話だ。数日後に卒業する3年生3人と一緒に下校する事になった。彼らを乗せた山手線が新宿駅に滑りこんだ。向こうのホーム(中央線)に黒いかたまりが蠢いているではないか!
蛇腹御一行様でざっと30人位か。ほぼ同時にお互いを見つけるや奴らは猛ダッシュで南口階段を駆け上る。こちらは9人。Sジは咄嗟に思った。(電車から降りず、ドアの前で迎え討つ?)違った。
「ネリラ。ハジャ、ハジャ!」と言いながら先輩は階段を駆け上る。Sジらもついて行く。階段を上りきった。時が止まったかのように双方は対峙した。
先手は先輩に対する蛇腹の飛び回し蹴りから始まった。Sジの全身に電流が走る。アドレナリンだ。Sジは目の前の蛇腹に飛び蹴りしながら突っ込んだ。それは団体戦において悪手だった。3倍以上と相対する時の基本は固まる事が肝心なのに調子に乗ったSジは敵中に入ってしまったのだ。
Sジは横から後から打撃され倒れた。そして袋叩き。なのに先輩や仲間も乱戦中で誰もSジに気付かない。顔や頭にも蹴りが雨あられ……気を失いかけたその時、誰かが蛇腹に襲いかかった。
蛇腹は逃げ出した。
「トンム、大丈夫か?」とある人が語りかけてきた。「アイツら許せないな。俺はチョチョンイルクンだよ。間もなく警察来るから俺は行くよ。負けんなよ。」
Sジは彼が救いの天使に思えた。が、彼は南口の外へと消え去った。乱闘は圧勝だった!Sジ以外は…
学生服が破れカラーのホックが破損してたたずむSジを見た先輩は「離れちゃ駄目だよ。突っ込む根性は認めるけどな。」と怒ったり慰めたりだ。
乱闘の第2幕は警察を挟んでの罵り合いだった。Sジは奴らの中にゲソ跡がついてる学ランを認めて少し気分が良くなった。そいつを指差しながらこう叫んだ。
「テメェ、顔憶えたかんな!」その蛇腹はギョッとして下を向いた。一人傷ついたSジの小さな勝利だった……彼は今でも、あの時(チョチョンのヒョンニム コマッスンニダ)の気持ちを忘れてはいない。
※悪手(あくしゅ)囲碁・将棋などでその場面で打つべきでないまずい手をいう
この話の推薦曲 水前寺清子の〈ありがとうの歌 〉 (続く)
高1のくせして、命知らずな奴ですね~💦
先輩のやり方を見習って突っ込まなきゃ~🙌
しかし、大変な時代ですね💦 今では、歯は全部ありますか?当時の傷は残ってないの?
今でさえ笑い話だけど、命がけで学校に通っていたんだね💦
ホント、女で良かった😌