初夏のうららかさを感じよう

지영이는 보았다(第2弾)その2

ある日、東北の김は仕事場で映画〈ボーン・スプレマシー〉を観ていた。ナポリ港の税関での(CIA職員を気絶させその携帯を細工をして盗聴し、CIAの目的を探る)シーンが大のお気に入り。なのでその場面は何度も繰り返し観ちゃう。

映画の後、김は自分のスマホとにらめっこしだした。最近バッテリーの消費がおかしいかな?彼のスマホいじりは通話とLINEを利用、それにテザリングの時だけだ。ゲームもやらないし、動画もスマホでは観ない。遅刻、欠勤が許されない仕事柄か、または長い缶詰状態からか食事や水分補給、体操はもちろんタバコやスマホを使う時間まで決めてるが如し。暇な日でも忙しい日でも同じ。なのでスマホのバッテリー(一日)の減り方も漠然でしかないが把握しているつもりだ。

同じ端末を長いこと使っているから、バッテリーが劣化してるのかなと普通に思った。でも、気になりだしたら原因を知りたい。

最寄りのスマホショップに行ってその旨を伝えたら「2年以上のご利用ありがとうございます。新商品がラインナップされてますのでこの機会に是非新機種に」と新プランがお得だの今ならポイントが二倍だのと営業をかけられてしまった。

話にならん!様子を見るつもりで電源ONだけはして使用は控えた。連絡は当分事務所の電話を利用しようと思った。2、3日様子見したが、それでも従来よりバッテリーの消費が早いのが気になるばかりだ。

김が事務所の電話のプッシュボタンで로영주の番号を押したのは、何の偶然かユミがチヨンの家を訪ねたその日のその時間帯だった。로の同級生にパソコンやスマホに詳しいオタクさんがいると前に聞いたような朧げな記憶があったから。
「置き電話からの着信だから誰かと思いましたよ。」と言いながら김の用件を聞くと로は即反応した。

「あっ、재광ですよ。彼の職場はウチの近所だから兄さんこっちに来る用事があったらいつでも案内しますよ。また呑みましょうよ」と二つ返事。김は三日後に東京で用事があるから、その時にでも寄るよと伝え、待ち合わせを決めた後、受話器を置いた。

あっ、そうだ。スマホの裏蓋に貼ってあるあの紙を剥がしておかないと。書かれた数列を眉間にシワを寄せながらジーツと睨んだのは老眼のせい。お守り代わりの二千円札を財布から取り出しそこに書き写した。紙を処分しながら(この暗号を使う事なんかあるのかなぁ?まさか、ないない)と頭の中で呟いた。

この晩も彼はDVD視聴に夢中だ。映画の題名は〈グッド・シェパード〉だった……

          続く

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